昭和55年6月16日
日本アイ・ビー・エム株式会社(椎名武雄社長)は、16日、IBM大型システムの能力と性能を大幅に向上させるための新しいハードウェアとソフトウェアを発表しました。
今回発表されたものは次の通りです。
3042型付加処理装置の新モデルは、最高12個までのチャネルを増設することができるものです。このことはデータ転送用の通路をそれだけ増大させることになります。従って3033付加プロセッサーの場合、最高28個までの入出力チャネルを装備することが可能となり、システムの能力と融通性を増大させることができます。
新しいIBM3814切替管理システムは、プロセッサーと印刷装置等の周辺装置との相互接続を電子的に変更することができるようにするものです。これによって大規模複雑なデータ処理システムの操作の単純化と生産性の向上をもたらします。
新しいIBM磁気ディスク装置は進んだ技術とコンパクトなデザインが特徴で、IBMの大型プロセッサーの大部分に接続することができます。 IBM3380磁気ディスク装置は1台の装置内に25億2,000万倍とまでのデータを記憶することができます。この記憶容量はIBM3350磁気ディスク装置の約4倍に相当します。また、今回同時に発表されたデータ・ストリーム機構によってこのIBM3380はIBM3031, 3032, 3033プロセッサーに最高毎秒300万バイトの速度でデータ転送を行うことができます。これはIBM3350のそれの2.5倍となります。
本日発表されたもう一つのモデルであるIBM3375磁気ディスク装置は8億バイト以上の記憶容量を持ち、IBM4331-2型および4341プロセッサーに接続することができます。またデータ・ストリーム機構を備えた3031, 3032, 3033プロセッサーにも接続することができます。
IBMの大型システム用の主要制御プログラムである多重仮想記憶システム(MVS)に幾つかの強化が発表されました。これはシステムおよび主記憶装置の管理機能の向上を目的とするものです。
また、各種の補助記憶装置上のデータ管理を向上させることができるプログラム・プロダクト(ソフトウェア製品)5本が同時に発表されました。またトータル・ストーレッジ・マネジメントと呼称されるシステム・アプローチを明らかにしました。
新しいMVS/システム・プロダクト(MVS/SP)は3033拡張アドレス機構をサポートするとともに、MVSのシステム、主記憶装置の管理機能およびジョブ入力機能の強化を行います。
拡張アドレス機構によって、IBM3033多重プロセッサー(MP)のユーザーは、例えば3,200万バイト(32MB)までの実記憶域―従来の2倍の実記憶域までをアドレスすることができます。このようにアドレスできる実記憶容量を拡張することによって、プロセッサーに収容する情報とプログラムが増大し、処理能力の向上をもたらすことになります。
今回発表の新製品の価格は次の通りです。
○IBM3042-2付加プロセッサー(チャネル6個の場合)
販売価格:約3億1,100万円
48か月リース契約での月額使用料金:約1,240万円
月額レンタル料金:約1,360万円
○IBM3814切替管理システム
モデルA(マイクロ・プロセッサー内蔵制御装置)、モデルB(遠隔装置)、モデルC(拡張装置)を含む。
販売価格:約5,620万円
24か月リース契約での月額使用料金:約143万円
月額レンタル料金:約168万円
○IBM3380-A型磁気ディスク装置
(最高3台までの3380モデルB接続可能)
販売価格:約2,540万円〜3,700万円
24か月リース契約での月額使用料金:約58万円〜約84万円
月額レンタル料金:約68万円〜約98万円
上記の価格の幅は選択する機構によります。
○IBM3380モデルB磁気ディスク装置
販売価格:約2,110万円または約2,900万円
24か月リース契約での月額使用料金:約48万円または約66万円
月額レンタル料金:約56万円または約77万円
○IBM3375磁気ディスク装置
A1型 | B1型 | |
販売価格: | 約1,120万円 | 約750万円 |
24か月リース契約での月額使用料金: | 約26万円 | 約18万円 |
月額レンタル料金: |
約31万円 | 約21万円 |
IBM3042-2型付加プロセッサーの客先向け初出荷は本年第3四半期の予定です。IBM3814切替管理システムの客先向け初出荷は昭和56年第2四半期より開始の予定です。IBM3380および3375磁気ディスク装置の客先向け初出荷はそれぞれ昭和56年7月および昭和56年第4四半期から開始の予定です。
写真
日本アイ・ビー・エムは、16日、同社の現行の大型システムの構成規模、性能及び柔軟性を大幅に拡大する新しい装置とソフトウェアを発表しました。
今回発表の内容は次のようなものです。
今回発表のIBM3042-2型付加処理装置は、1チャネル・グループ(6チャネルで構成)を標準機構として備えていて、さらに任意でもう1グループを追加接続することができます。従って、IBM3033AP(付加プロセッサー)としては、最高28チャネルまで利用できることになり、システムの構成を一段と拡大できるとともに、柔軟性も一段と加わります。既に設置済みの3042-1型付加処理装置は、適用業務の拡大等に対応するため、その場で同―2型へと変更することができます。
同じく今回発表のIBM3033MP拡張アドレス機構は、IBMの最大システムである3033MPに関して、アドレス可能な主記憶域をこれまでの2倍に拡張するものです。たとえば、3033MPで32メガ・バイトまでアドレス可能な主記憶装置を備えることによって、常時、より多くのプログラムとデータを扱えるようになります。
今回発表のデータ・ストリーム機構は、IBM3031, 32, 33プロセッサーのすべてのモデルと3042-2型付加処理装置用のものです。この機構はチャネル・プロトコールを拡張したもので、各プロセッサーに内蔵されたチャネル・グループそれぞれのうちの最初の2チャネルに限って、その転送率を倍増させる機能を持っています。この機構を用いることによって、毎秒300万バイトという高速のデータ転送速度を持つIBM3380磁気ディスク装置(今回発表)を接続することができるようになります。本機構を用いると、1チャネル・グループ(6本のチャネルで構成)あたりの最高の総合データ転送率を毎秒6.7メガバイトから10メガバイトにまで引き上げることができます。
任意選択機構の速度調整機構も今回新たに発表になったものです。これは、新製品のIBM3380磁気ディスク装置の持つ高密度記憶という一つの特徴を、IBM3031, 32, 33プロセッサーと3042-2型付加処理装置、さらにIBMシステム/370モデル158と168で、毎秒1.5メガ・バイトのデータ転送率で利用できるようになるものです。
今回発表のIBM3814切替管理システムは、コンピューター・システムのシステム構成を電子的な制御によって切替、変更するためのものです。これは、大型の複雑なシステムの管理に有効で、さらに中央制御室と離れたコンピューター室でともに利用することによって、コンピューター・システム全体の運転をより単純化できるようになります。
このシステムには最高80種類のコンピューター・システムの構成方式を記憶させておくことができ、3880磁気ディスク制御装置の新モデルをはじめとする制御装置類とプロセッサーのチャネルとの相互接続を管理します。
この3814システムは、1台ないし2台の3604-6型鍵盤表示装置(既発表)から、最高128切替ノード(16チャネルと8台の制御装置あるいは8チャネルと16台の制御装置といったように)の相互接続が行えます。
MVS/SP-JES2と同―JES3という2つの新しいプログラム・プロダクトが、今回、IBM3031, 32, 33プロセッサー、3042付加処理装置(AP)さらにIBMシステム/370モデル158と168向けに発表されました。
これらのプログラム・プロダクトは、MVS/SE(多重仮想記憶システム/システム拡張機能)という既発表のプログラム・プロダクトのもつすべての機能を取り入れていて、MVSの制御プログラムとストーレッジ管理機能を強化するとともに、今回発表の新しい磁気ディスク装置と3033MP拡張アドレス機構等をサポートします。一方、ジョブ入力サブシステムの機能強化により、割り込みを最少化し、システムの信頼度を向上させる新機能を持たせています。
MVS/SPプログラムのその他の重要な機能として仮想記憶間連絡機能と大域資源逐次化機能があります。
仮想記憶間連絡機能は、プログラム同士が共通の仮想記憶域を使わずに異なったアドレス空間相互の直接の交信を行えるようにするものです。これによって、共通記憶域のスペースを削減することができるので、記憶域をプログラムのためにさらに広く使用することができるようになります。また、大域資源逐次化機能は、多重システム(複数プロセッサー・システム)環境で、データや制御情報が同時更新時に確実に保護されるのを助けます。
システム・オペレーションに対するトータル・ストーレッジ・マネジメント(TSM)アプローチをサポートするソフトウェアも今回発表となりました。
この新しいプログラム・プロダクトには、データのアクセス時間を削減するためのDF/DS(データ機能/装置サポート)、データ・アベイラビリティ機能を向上させるDF/DSS(データ機能/データ・セット・サービス)、より信頼性が上がり、かつ簡単に使用できるようになったVSAM(仮想記憶アクセス方式)カタログ機能を持つDF/EF(データ機能/拡張機能)などがあります。
HSM(階層記憶管理プログラム)のリリース3も今回発表されました。これは、ストーレッジ管理機能の自動化機能が一段と改善されたものです。同じく今回発表のDASD移行支援プログラムは今回発表の新型磁気ディスク装置への移行の際に必要とされる費用と時間の節約に役立つものです。
IBM3042-2型付加処理装置、3814切替管理システム、さらに今回発表のプログラム・プロダクトの価格は次の通りです。
販売価格 | リース料金(月額) (48か月契約) |
レンタル料金(月額) | |
---|---|---|---|
3042-2型付加プロセッサー (6チャネル内蔵) |
約3億1,100万円 | 約1,240万円 | 約1,360万円 |
3814切替管理システム | 約5,620万円 | (24か月契約) 約143万円 |
約168万円 |
月額基本ライセンス料金 | |
---|---|
MVS/SP JES2 | |
リリース1 | 約44万円 |
リリース2 | 約47万円 |
MVS/SP JES3 | |
リリース1 | 約44万円 |
リリース2 | 約57万円 |
トータル・ストーレッジ・マネジメント(TSM) ソフトウェア 月額使用料金 |
|
---|---|
DF/DS | |
MVS用 | 約19,000円 |
OS/VS1用 | 約14,000円 |
DF/EF | 約35,000円 |
DF/DSS | 約19,000円 |
HSM | 約120,000円 |
DASD移行支援プログラム | 一括払い 約250,000円 |
3042-2型付加処理装置 | 昭和55年7月 |
3814切替管理システム | 昭和56年第2四半期 |
MVS/SP-JES2とJES3 | |
リリース1 | 昭和56年1月 |
リリース2 | 昭和56年7月 |
2つの新しい磁気ディスク装置を発表しましたが、より大容量の装置には最大25億2,000万バイトの情報を貯えることができ、これまでのIBM磁気ディスク装置のほぼ4倍の容量があります。
大量に記憶された情報を高速でアクセスしたいユーザーのために、新しいIBM3380磁気ディスク装置は、大容量かつ3メガ・バイト/秒のデータ転送率(IBM3350の2倍以上)を提供します。
設計上の革新により、従来の平均25ミリ秒から平均16ミリ秒に短縮された時間で情報を捜し出し、また新しい薄膜ヘッド技術により、これまでの2.5倍、すなわち3メガ・バイト/秒の速度でデータの読み書きが可能になっています。,
中規模システムのための磁気ディスク装置であるIBM3375は、最大8億1,900万バイトの情報を貯えることができます。情報を捜し出すのに必要とされる平均シーク時間は、19ミリ秒です。
IBM3380と3375は、ともにコンパクトな設計とともに新しい薄膜ヘッド技術が特徴です。
これにより、例えば、同一容量のIBM3350磁気ディスク装置と比較した場合3380で最大70%の電力消費量まで減少させることができます。
新しい磁気ディスク装置では、読み書きヘッド、磁気ディスク及び2つのアクチュエーター(ヘッド駆動機構)が、信頼性と効率を上げるためにHDA(ヘッド・ディスク・アセンブリー)に統合されています。
3380には2つ、3375には1つのHDA(ヘッド・ディスク・アセンブリー)が組み込まれています。
3380に、任意機構である動的経路選択機構を付けると、3880磁気ディスク制御装置との間で標準で1本のデータ経路が、さらに任意でもう1本のデータ経路を設けられるようになっています。
この代替経路により、データへの同時並行的アクセスが可能になり、万一、チャネル、記憶ディレクター、または制御装置の故障により、アクセスできない場合でも代替経路利用により使用可能度を向上させることができます。
新しいIBM3380と3375は、ともにカウント・キー・データのアーキテクチャーを使っており、このためIBM3350と3340磁気ディスク装置からの移行が容易に行えます。
3380は、3031, 3032, 3033プロセッサーおよび3042-2型付加処理装置(AP)に、3メガ・バイト/秒のデータ転送を可能にするデータ・ストリーム機構を介して接続できます。
任意機構である速度調整機構を付けると、3380は、1.5メガ・バイト/秒のデータ転送率でIBM3031, 3032, 3033プロセッサー、3042-2型付加処理装置、IBMシステム/370モデル158, 158-3型, 168, 168-3型に接続して使用することができます。
3375は、データ・ストリーム機構の付いたIBM3031, 3032, 3033プロセッサーおよび3042-2型付加処理装置(AP)ならびに4331-2型と4341プロセッサーに接続することができます。
2つの新しい磁気ディスク装置は、IBM3880磁気ディスク制御装置の該当するモデルによってサポートされます。
データ・ストリーム機構を使うと、3880はプロセッサー・チャネルから最大400フィートまでの距離に設置できます。
システムの拡張に対応できるように、1ストリングすなわち4台の3380からなるグループで最大100億バイトの情報を貯えることができ、各記憶ディレクターは最大2ストリング(計8台)の3380をコントロールすることができます。
4台の3375からなるグループは、最大32億バイトのデータを貯えることができます。
IBM3380は、6モデルからなり、そのうちの4モデルがコントロール機能を持ち、3モデルに固定ヘッド技術が採用されています。
IBM3380は、VM/370(仮想計算機機能/370)とACP/TPFおよびOS/VS2 MVS(多重仮想記憶システム)とDF/DS(データ機能/装置サポート)によってサポートされます。
IBM3375は、2モデルからなり、A1型は、IBM3880磁気ディスク制御装置に接続するのに必要なコントロール機能を持っています。
3375ストリングを作るために、最高3台のB1型がA1型に接続できます。
IBM3375は、拡張仮想記憶ディスク・オペレーティング・システム拡張機能(DOS/VSE EF)および仮想記憶オペレーティング・システム/1基本プログラミング拡張(OS/VS1 BPE)および多重仮想記憶システム/システム・プロダクト(OS/VS2 MVS/SP)とDF/DSおよびVM/370 SPによってサポートされます。
IBM3380磁気ディスク装置、同3375磁気ディスク装置および同3880磁気ディスク制御装置の価格は次の通りです。(概算)
販売価格 (万円) |
24か月リース 月額料金(万円 |
標準レンタル 月額料金 (万円) |
|
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IBM3380磁気ディスク装置 | |||
A型 | 2,540〜3,700 | 58〜84 | 68〜98 |
B型 | 2,110または2,900 | 48または66 | 56または77 |
IBM3375磁気ディスク装置 | |||
A1型 | 1,120 | 26 | 31 |
B1型 | 750 | 18 | 21 |
IBM3880磁気ディスク制御装置 | 1,471 | 36 | 42 |
客先向け初出荷は、IBM3380磁気ディスク装置が昭和56年7月、
IBM3375磁気ディスク装置が昭和56年第4四半期、
IBM3880磁気ディスク制御装置が昭和56年第2四半期、
の予定です。