IBM DOS バージョン J5.0/V
DOS/Vは、本来は日本IBMが低価格モデルのPS/55noteやPS/55Z向けに開発したOSだが、IBM PC互換機でも動作するよう作られている。ハードウェアとしては英文を表示する機能しかないIBM PC互換機において、VGAのグラフィック画面を使ってビットマップ表示による日本語表示を可能にした。また、英語モードとして英語版PC DOS相当の環境に切り替えると海外のIBM PC用アプリケーションがそのまま使えるほか、日本語モードにおいても海外アプリケーションが動作するようにそれなりの互換性が確保されている。DOS/Vの登場により、長らくの間国産の日本語処理に特化したハードウェアによって築き上げられていたパソコン市場の「鎖国」状態は崩れていった。
DOS/Vのルーツは早くも1987年に登場している。IBMがPS/55(実質はマルチステーション5550)のラップトップモデル IBM PS/55 モデル5535を開発する際、OSに5550と同様の漢字DOSにするかDOS/Vにするかという選択肢が上がった。まだVGAディスプレイ自体が登場したばかりだったこともあり、ここでは漢字DOSが採用されたが、IBM社内では次のラップトップ機はVGAディスプレイを採用しようという意向になった。この頃から既にDOS/Vの開発は始まっていたようである。
1990年10月にVGAディスプレイとDOS/Vを採用したラップトップモデル IBM PS/55 モデル5535-S(¥607,000)が登場した。DOS/Vの日本語モードは従来の日本語DOSと互換性がなく、対応する日本語アプリケーションが少ないという問題があったが、5535Sは法人向けだからワープロ、表計算、3270エミュレーターの3つが動けばいいということで発売する運びとなった。DOS/VがIBM PC互換機で動作するとわかるとまもなくパワーユーザーの間で反響が広がり、DOS/VがPS/55シリーズ本体の出荷量を上回るようになった。
なお、5535Sはオンライン端末として発売された法人向けの製品であり、日本IBMから発売されたコンシューマ向けのDOS/VマシンはPS/55note(5523S)が最初である。
DOS J5.0/Vの主な新機能はDOSSHELLの追加。マニュアル(入門書)においてもページの大半がDOSSHELLの解説に費やされている。しかし、使い勝手がイマイチで、多くのユーザーは代わりにFDなどの類似でより高機能なフリーソフトを使用したことだろう。他の追加機能としては、DOSKEY、UNDELETE、SETVERコマンドの追加、HMAメモリ、UMBメモリに対応。簡易版はコマンドの解説などが記載されたユーザーズ・ガイドが別売(4,520円)となっている。
1992年初めには、IBM Personal System/2 (米国仕様のIBM互換機)への対応とIBM連文節変換プログラムを改良した バージョンJ5.02/V が登場した。この後はJ5.02D/Vまでいくつかのアップデートパッチが配布された。
PS/55とDOS/Vとの関係
PS/55はハードウェアアーキテクチャーから見て、マルチステーション5550互換モデル、PS/2非互換のPS/55、PS/2互換のPS/55(PS/55の基本モデル)、PS/2互換のVGA専用モデル、の4種類に分けられる。これらはいずれもDOSとOS/2が用意されてソフトウェアの互換性は確保できるようにしていたが、ハードウェアでは部分的に互換性がなかった。当然OSもバージョン毎に対応機種が異なる。"PS/55のVGA専用モデル"ってPS/2とどう違うのかと思う方がいるかもしれない。PS/55にはVGA専用でありながら漢字ROMを搭載する機種があり、この機種ではDOS/V起動時にフォントの読み込みを省略して起動時間を短縮し、メモリの消費を抑えることができた。
日本IBMから発売された日本語DOSの系譜
製品名 | バージョン | 対応機種 | 日本語モード | 英語モード |
---|---|---|---|---|
日本語DOS | K2.0 - K3.2 | マルチステーション5550 | 5550 | なし(別売) |
日本語DOS | K3.3, K3.4 | パーソナルシステム/55 | PS/55(5550上位互換) | なし(別売) |
IBM DOS | J4.0, J5.0 | パーソナルシステム/55 | PS/55(5550上位互換) | VGA |
IBM DOS | J4.0/V, J5.0/V | パーソナルシステム/55 | VGA | VGA |
PC DOS | J6.1/V - J2000 | IBM互換機 | VGA | VGA |
5550は米IBM PCとハードウェア面で全く互換性がなく、5550に対応した日本語専用のDOSが用意された(輸出用で韓国語・中国語・英語モデルも存在)。起動時のメッセージで「Kanji DOS」と表示されたことから漢字DOSとも呼ばれた。1988年に発売されたPS/55モデル5550-S/Tより米IBM PS/2との互換性を確保。別売のPC DOS(英語版)に対応した。1989年に発売されたDOS J4.0より日本語版のDOSで日本語モード(PS/55)と英語モード(PS/2 VGA)の切り替えが可能になった。そして、1990年に登場したDOS J4.0/VによってVGAで日本語表示が可能になった。これにより日本独自仕様のハードウェアが不要になり、世界共通のIBM PC互換機で日本語のDOSが動くようになった。(公式にはPC DOS J6.1/VよりIBM互換機に対応。)
余談だが、開発者曰く、PS/2やPS/55が発売された1987年と同年に、VGAで16ドット日本語フォントを表示するDOSが開発されていたようだ。フォントの読み込みに漢字ROMを使用するものだったが、先の「PS/2互換VGA専用モデル」と似ており、DOS/Vの原型と言える。しかし、まだVGAが普及するかどうか不明瞭な頃だったことに加え、IBM社内でPS/55の24ドットフォントを重視する意見が多かったため、表に出ることはなかった。(どこかのサイトにはバージョン3.3をベースに開発した、ようなことが書かれていたはずですが、ソース失念。)
システムディスク ファイル一覧
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