NEC PC-9801ESを分解する

Image: PC-9801ES Front panel

日本電気PC-9801ES(released on Apr.1989)を分解してみる。(といっても写真は数年前に撮ったものだけど。)
いつもと違って写真をそのまま貼っているので、画面解像度が幅1280ドット以上ないと写真がきれいに表示されません。

PC-9801ESは1989年4月に、Intel 80386 16MHzと1.6MBのメモリを搭載してハードディスクを内蔵しないPC-9801ES2と、SCSIインターフェースと40MB固定ディスクを内蔵したPC-9801ES5として発表されました。メーカー希望価格はPC-9801ES2が448000円、PC-9801ES5が638000円でした。
当時としてはフラグシップモデルのPC-9801RAとほぼ同じ仕様でありながら、3.5インチFDDを採用した小型筐体であったため、結構人気がありました。その少し後に学校教育へのPCの導入が盛んになったことも影響し、PC98全体で1989年2月から約1年3ヶ月の間に100万台を出荷しました。
仕様はこちらを参照。発売時点では80386 16MhzのPC-9801RA2/5とほぼ同等の仕様でしたが、1989年11月に80386 20MHzのPC-9801RA21/51が発売されてからこちらがフラグシップモデルになりました。
当時のNECの上位システムの内の最上位機種は、オフィスコンピュータ系列でNEC IDP-2(28MHzx3CPU)を搭載したNECシステム3100モデル90A、ワークステーションでモトローラ68030 33MHzと68882を搭載したEWS4800モデル60、メインフレームでACOSシステム930、スーパーコンピューターで22GFLOPSのSX-3モデル44がありました。EPSON互換機では1988年10月に発売されたPC-386STDで80386 20MHzを採用し、NECのフラグシップモデルの仕様を上回っていました。

○ケースを開ける

 PC-9801ES2 inside
輪郭が少しギザギザになっていますが、我ながら編集はうまくいった方だと思います。んなことどうでもいい。

この写真ではCPUやメモリは陰に隠れていて見えません。左が前面パネル。手前には3.5インチフロッピーディスク装置が2台。右奥にあるのが電源。奥にある囲まれた空間が拡張スロットです。筐体は金属製でしっかりしていて、上に人が座っても問題なさそうです。(※それによってもし筐体や基板等がゆがむ、または破損しても私は責任を負いません。)
拡張スロットに取り付ける拡張ボードは、インターフェースボード、グラフィックボードやサウンドボードなど今とそれほど変わらないものもあれば、CPUやメモリを搭載したものもありました。ただしWindowsとは異なりDOSは最小限の機能しか持っていませんので、DOS上で各種拡張ボードを使用するには、それに対応したソフトウェアが必要です。幸いPC98においてSCSIボードやサウンドボードはNECから拡張ボードが発売されたので、周辺機器メーカーやソフトメーカーも純正ボードの仕様に準拠する製品を出し、それらについてはハード・ソフトの対応という面では困りませんでした。
Buffalo EMSボード(4MB)

話がそれたので戻すと、分解するには、まず拡張ボードを外す→バックパネルを外す→内蔵固定ディスクを外す→電源を外す→フロントパネルを外す→FDDとケーブルを外す→FDDシャーシを外す→拡張スロットシャーシを外す、という順番でパーツを外していきます。5インチFDD搭載モデルでFDDのイジェクトレバーとフロントパネルが一体になっている場合、先にイジェクトレバーを外します。

○内部を清掃する

シャーシ等の汚れは普通に雑巾などで拭き取ります。クレ556などの溶剤はプラスチックにかけるとひび割れを起こすので注意します。端子部のほこりはエアダスターと掃除機で吸い取るのがいいでしょう。

基板についても普通はエアダスターと掃除機を組み合わせてほこりを取るのですが、PC98に関しては長年経過してこびりついたほこりが付いていると思います。PCクリーニング用ウェットティッシュを使うか、水をコットンや綿棒に染みこませて拭きます。汚れが相当ひどい場合はエタノールや無水エタノールを使ってもいいですが、基板のコーティングが取れる恐れがあるのであまりお勧めできません。

○マザーボード(メインボード)

PC-9801ESのマザーボードは2段になっています。上段にCPUとメモリチップ、下段に拡張バスやその他諸々のデバイスが配置されています。これより前の機種もCPU(と周辺回路)だけ違う基板に乗っていたため、これをCPUボードと呼んでいました。
PC-9801ES PCB
1991年1月製造。中央やや下にあるのがCPU(Intel 80386SX)です。その左にあるソケットには別売の数値演算プロセッサ(i80387)を取り付けます。
ソケットの下にある白くて細長い端子には、別売の増設RAMボード(PC-9801ES-01)を接続します。ここに接続する増設RAMボードはPC-9801ES専用品ですが、バッファローやアイオーデータからも互換品が発売されていたと思います。
CPUの右下にたくさん並んでいるチップがメインメモリです。
PC-9801ES Motheboard PCB
これはマザーボードの下段です。中央の黒いソケットが拡張スロットの通称Cバスかごを接続する端子。その上にROMとV30 CPUとその数値演算プロセッサ(i8087)を実装するためのソケットがあります。左上の50ピン端子は内蔵のSCSIインターフェースを接続します。右上の34ピン端子にはFDDケーブルを接続します。
3つの大きな黒いチップはNECのカスタムICです。それぞれテキスト表示、グラフィック表示、IOの制御を行います。PC-9801VXまではメインボードにICがずらりと並んでいましたが、PC-9801UV11よりこれらのカスタムVLSIを採用して省スペース・小型化することができました。詳しいことは知りませんが、この3つのチップの開発にはかなり苦労したそうです。その証拠と言っていいのかわかりませんが、右のカスタムICの上にある緑のチップ(Enhanced Graphic Charger)はPC-9801VXから同じで、チップセットに統合できなかったことがわかります。
マザーボード裏面の写真を撮るのは忘れていました。

フロントパネル
PC-9801ES Front panel
上段左から、電源ランプ、ディスクアクセスランプ、フロッピーディスク装置、電源スイッチ。
下段左から、キーボード入力端子、マウス入力端子、リセットスイッチ、音量調整、ディップスイッチ。本来は音量調整とディップスイッチの部分にカバーが付いています。ディップスイッチの設定内容は以前取り上げた通りです。

電源スイッチはAT電源と同様2段階式になっており、写真の状態は電源オフ、スイッチを押し込んだ状態にすると電源オンになります。ソフトウェアから電源をオフにすることはできません。ではどうやって電源を切るかというと、MS-DOSの場合はプログラムを終了してコマンド入力待機状態に戻ってから、アクセスランプが点灯していないことを確認してフロッピーディスクを取り出し、STOPキーを押して固定ディスクをリトラクトし(固定ディスクが自動リトラクトに対応していない場合のみ)、電源スイッチを押して電源を切ります。
Windows 95以降の場合は通常通りシャットダウンすると、「コンピュータの電源を切る準備ができました。」と表示されるので、それから電源スイッチを押して電源を切ります。

バックパネル

PC-9801ES Back panel
まあコアなNECユーザーならご存じかと思いますが、製造番号の最初の2桁は製造年と製造月になっています。10月=X、11月=Y、12月=Z。現行のNECのPCも同じです。

電源ユニットの内部 (TDK PU471)

TDK PU471 Power supply unit

電源ユニットはTDK製のPU471です。これはその内部の基板です。基板の素材は紙エポキシで、見るからにして安っぽいです。LongLifeと書いてあるくせにShort Lifeなコンデンサの根元から悪臭を放つ液体が大量にこぼれていて、基板の配線や電源ユニットの筐体が腐食していました。他にニチコンの大型コンデンサや日本ケミコンのコンデンサがいくつかありました。いずれも故障しているのか区別が付かないほど、LongLifeの液漏れの汚れが付いていました。アルミ電解コンデンサを全て外して修理しようと思ったのですが、問題がコンデンサ以外にもあることがわかり、あきらめました。トホホ
PC-9801E*系やPC-9801D*系の電源ユニットは壊れやすいことで有名です。逆に、トーキンのPC98用電源をいくつか持っているのですが、これらが壊れたことはありません。1983年発売のPC-9801Fに付いていた電源ユニット(東北金属工業製のPU102)は、修理しなくても今でも問題なく動作します。
一応付け加えておくと、最近になって電子工作用にTDKラムダ製の電源を買いましたが、こちらはニチコンや日本ケミコンの高品質なコンデンサが使われている上に基板はガラスエポキシで、長く使えそうです。

付属のキーボード (RDFキーボード)

Keyboard for PC-98 (Built in 1991)

NEC純正のキーボードです。PC-9801ES/EXのキーボードは右上のロゴが古い表記になっていたような気がするので、付属のものではないかも。PC-9801RA/DA/FAの頃に付属したキーボードはとても評判がよく、一部のPC98ユーザーからはRDFキーボードと呼ばれて親しまれていました。そのうち詳しく紹介しようと思います。
ちなみにキーボードは本体に付属しますが、ディスプレイは別売です。サイズやドットピッチの違いなどで、NEC純正のディスプレイだけでもいくつか種類がありました。

この頃の機種はメインボードの変化が著しくてなかなか面白いのですが、アーキテクチャーとしてはほとんど変わっていないんですよね。その辺りがPC98のよいところであり悪いところなのでしょう。

何分PC9801をリアルタイムで使っていた世代ではないので、誤り等ありましたらご指摘下さい。


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