NEC MS-DOS 3.3C ユーザーズガイド:付録A エラーメッセージ Q&A
MS-DOSを使っていると,いろいろなメッセージが表示されます.その大部分は,"システムメッセージ"と呼ばれるもので, コンピュータがいまどんなことをやっているかをユーザーに知らせる, レポーターの役目をしています. これは,一目で意味を知ることができる簡単な内容です.
しかし, 中には処理の失敗を告げてきたり,ユーザーに意見を求めてきたりするメッセージ(エラーメッセージ)もあります. ここでは,そのようなエラーメッセージの中から, よく見かけるものを集めて,原因と対処法を解説します.
重要なエラーメッセージ - デバイスエラーメッセージ
エラーメッセージの中には, 周辺装置(ディスクやプリンタなど)に対する処理を行ったときに表示される"デバイスエラーメッセージ"があります. これは, ディスクドライブやプリンタ, ディスプレイなどの周辺装置(デバイス)に対して,データの読み出し/書き込みを行ったときに,MS-DOSが表示するもので,次のような形をしています.
〈エラーのタイプ〉〈読取り中/書込み中〉〈デバイス名〉 中止〈A〉,もう一度〈R〉,無視〈I〉?
(例)ディスクが入っていないドライブ(Bドライブ)を指定してDIRコマンドを実行した場合.
〈エラーのタイプ〉は, そのとき起こったエラーの内容を説明するものです.〈デバイス名〉は, エラーが起きた装置を示します.〈読取り中/書込み中〉は, そのとき試みていた処理を示すもので, 〈読取り中〉か〈書込み中〉のいずれかが表示されます.
"中止〈A〉.もう一度〈R〉,無視(I)?"は,エラーの後の処理をどうしたらよいかをユーザーに尋ねているものです.ユーザーは"A"、"R"、"I"のうちのいずれかのキー(半角英文字1字)を選んでタイプしなげればなりません(これら以外の文字は,受け付けられません).それぞれの文字の意味は次のとおりです.
A (Abort) 処理を中止し,そのままMS-DOSにもどる. R (Retry) もう一度読み書きを試みる. I (Ignore) 失敗した処理を無視し,次の処理に進む.
このエラーメッセージが表示されたときは,普通は次のような手順で対応します.
まず,エラーメッセージを読んで,何がエラーの原因かを考えます.
たいていは,ちょっとした操作のし忘れが原因です.たとえば,「ドライブの準備ができていない」場合の原因は,ディスクをセットし忘れていたとか,ドライブの蓋をきちんと閉めていなかったなどであり,「ディスクが書き込み禁止になっている」場合は,ライトプロテクトシールを貼ったままにしていた(5インチフロッピィディスクの場合)などです.これらを訂正したあとで"R"を押してください.
その他の原因の場合でも, まず,"R"をタイプしてみます.エラーの原因が軽ければ, 1〜数回,"R" を押すことによりそのまま処理を続行することができます.
それでもエラーメッセージが出るようであれば,処理を中止し, MS-DOSのプロンプト表示状態にもどって,じっくりと原因と対策を考えます.そのためには,"A"を押します.この場合, メッセージが出されたときに実行中だった処理の結果は保障されません.
ファイルの読み書き中にこのメッセージが表示された場合,いくつかのファイルは使用できなくなっている可能性が非常に高いと考えられます.
ファイルが壊れている場合の対処方法
前述のような状況や,CHKDSKコマンドでエラーメッセージが表示された場合, ディスクのいくつかのファイルは使用不可能になっていることが考えられます.このような場合は,問題のあるファイルを突き止めるとともに他の正常なファイルのコピーを作成します.
COPYコマンドを使って,問題のディスク上のファイルを1つずつ,他のディスクにコピーしてください.コピー中にエラーの発生したファイルが問題のファイルです.コピーできるファイルをすべてコピーしたら,RECOVERコマンドによって,問題のファイルの修正を試みます.
問題のファイルがテキストファイルの場合は,内容が一部欠落したり順序が入れ替わった状態に修復される可能性があります(このファイルも他のディスクにコピーします).問題のファイルがプログラムなどのバイナリファイルの場合は,残念ながら修復はほとんど不可能でしょう.
デバイスエラーメッセージが出た場合は,使用中のディスクになんらかの問題があるものと考えられます.被害が大きくならないうちに早くファイルのバックアップをとり(このようなときは,エラーを無視しでもコピーをとる必要があるので"I"を用います),その問題のディスクは使用しないようにすることがよいでしょう.
なお,使用をやめたディスクは,すぐ捨てずに,もう一度フォーマットし直してみることをおすすめします.磁石によるダメージは問題なく回復します.ただし,フォーマットしても,すぐにまたエラーを起こすようであれば,そのディスクは廃棄したほうがよいでしょう.
メッセージとその対策
ここでは,比較的よく表示されるエラーメッセージについて,原因と対策を説明します.説明は,アルファベット順と五十音順で掲載されています.この他のメッセージについては,「ユーザーズリファレンスマニュアル」を参照してください.
0で除算をしました.
- 原因
- 実行しようとしたコマンドのプログラム内部のエラーです.
- 対策
- コマンドの実行は自動的に中止され, MS-DOSにもどります.コマンドや,アプリケーションプログラム自体に問題があるので, プログラムの修正が必要です.
COMMAND.COMが見つかりません.
- 原因
- システムディスクに, COMMAND.COMファイルがありません.または, CONFIG.SYSファイル中のSHELLコマンドで指定されたパス位置と,実際にCOMMAND.COMファイルの存在しているディレクトリ位置が違っています.
- 対策
- 他のシステムディスクでMS-DOSを起動しなおした後に,エラーメッセージの出たシステムディスクにCOMMAND.COMファイルがなければ,これをコピーします.また, CONFIG.SYSファイルのSHELLコマンドで指定したパス位置が,実際にCOMMAND.COMファイルの存在しているディレクトリと違っているときには, CONFIG.SYSファイルを訂正するか, SHELLコマンドで指定したパス位置のディレクトリにCOMMAND.COMをコピーします.
COMMAND.COMのバージョンが違います.
COMMAND.COMの入っているディスクをカレントドライブに挿入してください.
どれかキーを押してください.
- 原因
- メモリの大部分を使用するプログラムを実行した場合,MS-DOSはCOMMAND.COMファイルをロードし直します.このとき,COMMAND.COMファイルが見つからないか, または別のバージョンのシステムディスクのCOMMAND.COMを入れた場合に表示されます.
- 対策
- MS-DOSを起動したときと同じシステムディスクをカレントドライブに入れ, どれかのキーを押してください.またはシステムディスクをドライブに入れ, リセットを押して再起動させます.
CONFIG.SYSに無効なコマンドかパラメータがあります.
- 原因
- CONFIG.SYSファイルの中で,正しくないコマンドが使われています.
- 対策
- CONFIG.SYSファイルを確認して,コマンドの綴りや,CONFIG.SYSファイルでは利用できないコマンドが入っていないか調べます.正しいコマンドとコマンドの書式については,「第4部第2章CONFIG.SYSファイルについて」または「ユーザーズリファレンスマニュアル」を参照してください.
DOSのバージョンが違います.
- 原因
- 現在のMS-DOSのバージョンと,アプリケーションプログラムを実行するためのMS-DOSのバージョンが一致していません.たとえば,MS-DOS 3.3(バージョン3.3)で利用すべきアプリケーションを,MS-DOS 3.1やMS-DOS 2.1で利用しようとしています.上位バージョン用に作られたコマンドやアプリケーションは,それ未満のバージョンのMS-DOS上では実行できません.
- 対策
- 実行しようとするコマンド, アプリケーションの対応バージョンを確認し,正しいバージョンのMS-DOSで実行しなおしてください.
書き込みができません.〈書込み中〉〈デバイス名〉
中止〈A〉,もう一度〈R〉,無視〈I〉?
- 原因
- 表示されたデバイス(通常はディスクドライブ)にデータを書き込むことができません.
- 対策
- ディスクが正しく入っているかを確かめ,"R"を選んでください. もし,同じメッセージが表示されるならば,"A"を選びます.前項「重要なエラーメッセージ」で説明されている処置を試みます.
書き込み禁止です.〈書込み中〉〈デバイス名〉
中止〈A〉,もう一度〈R〉,無視〈I〉?
- 原因
- ライトプロテクト(書き込み禁止)が施されているディスクに対して,書き込みを行いました.
- 対策
- ライトプロテクトをはずし,"R"を押します.ただし, プロテクトの施されている理由を考え,本当にデータを書き込んでよいのかどうか確認してから行ってください.
このディスクは使えません.〈読取り中〉〈デバイス名〉
中止〈A〉,もう一度〈R〉,無視〈I〉?
- 原因
- ディスクがMS-DOS用にフォーマットされていません.
- 対策
- まず,"A"を押してMS-DOSにもどってください.つぎにRECOVERコマンドを実行してみます.RECOVERコマンドを実行しても解決しない場合,そのディスクは,フォーマットされていないか, MS-DOS以外で(たとえばDISK-BASIC)でフォーマットされています. FORMATコマンドでディスクをフォーマットし直してください.ただし,フォーマットを行うと,ディスク上のファイルはすべて消去されます.
このディスクはシステムディスクとしては使えません. [FORMAT]
- 原因
- システムファイルを書き込むトラックが不良です.
- 対策
- このディスクはデータ用としてのみ使用可能です.
コピーすることはできません. [COPY]
- 原因
- COPYコマンドで指定した,コピー元ファイル名とコピー先ファイル名が同じです.たとえば,
copy file1 file1
を実行すると, このエラーが表示されます. - 対策
- 同じディレクトリ内で,同名のファイルを作成することはできません.ファイル名を変えて,コピーし直してください.
コピー前に送り側の内容が失われました. [COPY]
- 原因
- 複写元ファイルが,コピーの完了する前に重ね書きされてしまいました.たとえば,次のコマンドでは,コピーの終る前にbbbファイルの内容が破壊されてしまいます.
copy aaa+bbb bbb - 対策
- 複写元ファイルは,ふつう壊されることがないのですが,上記のような例では,例外的に破壊されます.内容の失われたファイルを復旧することはできません.以後, COPYコマンドの書式に十分注意してください.また,このようなときのためにも,バックアップを作るようにしてください
コマンドまたはファイル名が違います.
- 原因
- 指定したコマンドまたはアプリケーションプログラムが見つかりません.コマンド名やファイル名をまちがえたか,ファイルがディスクに存在しないか,パス(PATH)の設定が正しくありません.
- 対策
- ファイル名をまちがえていたら,正しく入力し直します.パスが設定されていない場合は,パスを設定するか,ファイル名にパス名をつけるか,カレントディレクトリ中に目的のコマンドファイルがなくてはなりません.パスが設定されているときは,カレントディレクトリ中,または設定パスのディレクトリのいずれかの中に目的のコマンドファイルがなくてはなりません.パスをPATHコマンドで調べ,正しい状態でコマンドを使うようにしてください
セクタが見つかりません.〈読取り中/書込み中〉〈デバイス名〉
中止〈A〉,もう一度〈R〉,無視〈I〉?
- 原因
- 使用しているファイルやディスクに欠陥があるため,正しくデータを読むことができませんでした.
- 対策
- ディスクをいったん取り出し,もう一度セットし直してから,"R"を押して何度か再試行を試みます.それでもエラーが出るようであれば,"A"を押して処理を中止しMS-DOSにもどり,前項「重要なエラーメッセージ」の処置を試みます.エラーの起こったディスクは,フォーマットし直してください.
ディスクがいっぱいです.
- 原因
- ディスク容量がいっぱいです.指定されたコマンドを行うための空きがありません.
- 対策
- ディスク中の不要なファイルを消去するか,別のディスクを使用してください.
ディスクの種別が同じでなければなりません. [DISKCOPY]
- 原因
- DISKCOPYを実行するには, 2枚のディスクは同じ容量でなければいけません.たとえば,2DDディスクから2HDディスクへのDISKCOPYはできません.
- 対策
- 複写元のディスクと同じ容量のディスクを用いるか, COPYコマンドでファイルごとにコピーしてください.ただし, 8インチ2Dディスクと,5インチ2HDディスクとは,互いにDISKCOPYが可能です.
ディレクトリの指定が違います. [CHDIR]
- 原因
- 指定したディレクトリが存在しないか,または不良です.
- 対策
- 入力したディレクトリ名を調べ,正しいディレクトリ名を入力してください.
ディレクトりは作成できません. [MKDIR]
- 原因
- 指定したディレクトリが作成できません.指定した名前がすでにファイル名として使われているか, またはディスクがいっぱいです.
- 対策
- DIRコマンドでカレントディレクトリを調べ,違うディレクトリ名を指定します.ディスクの容量がいっぱいのときは,不要なファイルを消去するか,別のディスクを使用してください.
ドライブの準備ができていません.〈読取り中/書込み中〉
中止〈A〉,もう一度〈R〉,無視〈I〉
- 原因
- メッセージに表示されたディスクドライブは,準備ができていません.
- 対策
- ディスクが正しくドライブに入っていない場合は, きちんと入れ直します.また, ドライブの蓋が聞いている場合は,閉じてください.それから"R"を選びます.
トラック0が不良です.このディスクは使えません. [FORMAT]
- 原因
- MS-DOS用にフォーマット(初期化)できない重大な欠陥があります.
- 対策
- このディスクは,MS-DOSでは使用できません.他のディスクを使ってください.
パスの指定が違うか,ディレクトリでないかまたはディレクトりが空ではありません. [RMDIR]
- 原因
- ディレクトリ名の綴りが違うか,ディレクトリ中にまだファイルやサブディレクトリが残っています.
- 対策
- 削除しようとしたディレクトリのパス名を正しく指定してください.また,ディレクトリに"."および".."以外のファイルやディレクトリがあると,そのディレクトリは削除できませんので,ファイルやディレクトリをすべて消去してから, RMDIRコマンドを実行してください.
パスまたはファイル名が違います.
- 原因
- 指定したパス名またはファイル名にまちがいがあります.
- 対策
- パス名またはファイル名を正しく指定してください.
バッチ処理を中止しますか〈Y/N〉?
- 原因
- バッチファイルを実行中にCTRL+Cキーを押した場合に表示されます.
- 対策
- バッチ処理を中止する場合はY(Yes)を,続行する場合はN(No)を押して下さい.いずれの場合も,CTRL+Cキーを押したときに実行中であったコマンドの処理結果は保証されません.
バッチファイルのあるディスクをドライブに差し込み,どれかキーを押してください.
- 原因
- 指定したバッチファイルの入っているディスクが, ドライブにありません.バッチ処理の進行中,ディスクを入れ換えたりすると, このメッセージが表示されます.
- 対策
- バッチファイルの入っているディスクを指定されたドライブに挿入し直してから,どれかのキー(スペースキーやリターンキーなど)を押してください.
パラメータの数が違います.
- 原因
- 指定したパラメータ(引き数)の個数がまちがっています.
- 対策
- コマンドの書式を調べ,正しいパラメータを指定してください.
パラメータの指定が違います.
- 原因
- 指定したパラメータ(引き数)の書き方がまちがっています.
- 対策
- コマンドの書式を調べ,正しいパラメータを指定してください.
日付の指定が違います. [DATE]
- 原因
- MS-DOS起動時,またはDATEコマンド実行時に,入力した日付の形式や数字にまちがいがあります.
- 対策
- 正しい形式で,日付を入力しなおしてください.
ファイルアロケーションテーブルが不良です.
- 原因
- ディスクが正しくフォーマットされていません.または,ディスクがMS-DOSではないオペレーティングシステムのものです.
- 対策
- RECOVERコマンドを実行してディスクを修復してください.
ファイルが見つかりません.
- 原因
- 指定したファイルが見つかりません.
- 対策
- 指定されたディレクトリ内にファイルが存在しているかどうか, またはファイル名が正確かどうか調べてください.
ファイル名が重複しているか,またはファイルが見つかりません. [REN]
- 原因
- 指定したファイルが見つからないか, またはすでに存在しています.
- 対策
- 指定されたディレクトリ内にファイルが存在しているかどうか,またはファイル名の綴りを調べてください.
プログラムが大きすぎてメモリに入りません.
- 原因
- コマンドまたはアプリケーションの実行に必要なメモリ容量が不足しています.
- 対策
- メモリの増設が必要です.ただし,MS-DOSを再起動することにより,そのまま実行できることもあります.(引用者注:MS-DOSで使用できる基本メモリはMS-DOSの常駐部を含めて最大640KBです。システムメモリが640KB以上あるのにこのメッセージが表示される場合は、不要なデバイスドライバや常駐プログラムを取り除いて基本メモリを空ける必要があります。アプリケーションによっては拡張メモリがあると必要な基本メモリの容量が少なく済む場合があります。拡張メモリの対応可否についてはアプリケーションのドキュメントを参照してください。)
文法が遣います.
- 原因
- 入力したコマンドの書式が間違っています.
- 対策
- コマンドの書式が正しいかどうか調べてください.
メモリが不足です.
- 原因
- コマンドまたはアプリケーションの実行に必要なメモリ容量が不足しています.
- 対策
- メモリの増設が必要です.ただし,MS-DOSを再起動することにより,そのまま実行できることもあります..((引用者注:MS-DOSで使用できる基本メモリはMS-DOSの常駐部を含めて最大640KBです。システムメモリが640KB以上あるのにこのメッセージが表示される場合は、不要なデバイスドライバや常駐プログラムを取り除いて基本メモリを空ける必要があります。アプリケーションによっては拡張メモリがあると必要な基本メモリの容量が少なく済む場合があります。拡張メモリの対応可否についてはアプリケーションのドキュメントを参照してください。)
メモリのアロケーションエラーです.
COMMAND.COMをロードできません.
- 原因
- システムディスク中のシステムファイルに問題があります.または,不良なコマンドを実行しています.
- 対策
- システムディスクが壊れています.バックアップディスクから,新しいシステムディスクを作成して,MS-DOSを起動し直してください.
読み取りができません.〈読取り中〉〈デバイス名〉
中止〈A〉,もう一度〈R〉,無視〈I〉?
- 原因
- 表示されたディスクまたはデバイスからデータを読み取ることができません.
- 対策
- ディスクが正しく入っているどうか確かめ,"R"を押してください.もし,同じメッセージが表示されるならば,前項「重要なエラーメッセージ」の処置を試みます.
出典:NEC MS-DOS 3.3C ユーザーズガイド、日本電気株式会社、1990年発行