DOS/Vのバージョン別制限事項
DOS/V(PC DOSおよびMS-DOS 日本語版 製品版)のバージョン別で制限事項をまとめてみる。
各バージョンの新機能についてはマニュアルやREADMEで知ることができるが、逆に古いバージョンでは何ができないのか、はっきりしない。そこで、新しいバージョンから古いバージョンへさかのぼって、各バージョンの制限事項をまとめてみた。
Windows 95 リテール版(OSR1)以前
FAT32フォーマット(2GB超のパーティション)未対応
FAT32フォーマットにはWindows 95 OSR2以降で対応している。Windows 95 OSR1以前ではFAT32フォーマットのドライブを認識できない。また、FAT16フォーマットでは仕様上最大4GBまでサイズを拡張できるが、Windows 95では2GB超のFAT16フォーマットには対応していない。なお、現在はFAT32やexFATフォーマットのUSBメモリにアクセスできるようにするドライバがインターネット上にフリーソフトとして存在する。この内容はPC DOS 2000以前にも当てはまる。
PC DOS 2000(PC DOS J7.00C/V)以前
INT13H Extension(8GB超のIDEディスクアクセス)未対応
DOSではBIOSのINT13Hという機能を使ってIDEインターフェイスのハードディスクのデータにアクセスする。これはパラメータの仕様上、ハードディスクの先頭から8GBの領域にしかアクセスできない(8GBの壁)。後にINT13H Extensionという機能の拡張が行われて128PBまで対応できるようになり、Windows 95から対応した。しかし、PC DOS/MS-DOS製品版はこれに対応していない。よって、次のような制限がある。
- [FDISK] 基本領域は1ハードディスクに1つしか作れない。(他のOSで作成した領域はカウント対象外。)
- [FDISK] 作成できる基本領域の最大容量は2047MB (FAT16フォーマットでの管理可能最大容量。)
- [FDISK] ハードディスクの容量表示は最大8GBまでしかカウントされず、8GB以上のハードディスクでは容量表示が不正確になる。
- [DOS] 8GB以上の領域に正しくアクセスできない。8GB以上の領域にデータを書き込んだ場合は他のデータが破壊される。
8GB超のハードディスクであっても、FDISK以外のディスク管理ツールを用いて先頭8GB以内の領域にパーティションを作成・インストールする分には問題ない。また、SCSIやUSBなどIDEインターフェイス以外の接続によるディスクアクセスではこの制限は存在しない。
PC DOS 7.0(J7.00/V)以前
- 2014MB以上の領域から起動しない。
- 2014MB以上の未使用ハードディスクに新規インストールできない。
- 2014MB以上の領域に新規インストールできない。
- 2000年問題が一部残留している。
MS-DOS 6.2以前
EMM386のフリーズバグ
付属のEMM386.EXEのバグにより、PCIバス対応Intel製チップセット(PIIX系)を搭載するシステムでは、MS-DOSインストール後の起動時にフリーズする。
[対処方法1] EMM386を無効化する。1枚目のセットアップディスクで起動。自動で開始されるセットアップを閉じて、コマンドラインで「C:\DOS\EDIT C:\CONFIG.SYS」を実行。「DEVICE=C:\DOS\EMM386.EXE」の行を削除する。EMSメモリやUMBメモリは使用できなくなる。
[対処方法2] EMM386を別のファイルに置き換える。PC DOS J7.0/VやWindows 95以降を所有しているのであれば、そこからEMM386.EXEを持ってきて置換する。または、QEMM等のサードパーティーのメモリ管理ソフトを使う。
[対処方法3] Nifty-ServeのMicrosoft Users' ForumからEMM386の修正モジュールを入手する。現在Nifty-Serveは閉鎖しており、当時の雑誌の付録ディスク等で入手するしか方法はない。
2000年問題
2000年以降の日付の扱いについて、次のような軽微な問題が存在する。
- DATEコマンドで西暦下2桁による日付の変更ができない。西暦を4桁で入力すれば正しく処理される。
- DIRコマンド、MSBACKUP、MSAVについて、西暦2000年以降の日付が正しく表示されない。DOSの内部では日付データは1980年を基準とする相対値で扱われているため、内部処理は正しく行われる。
DOS 5.0(J5.02/V)
- RAMは最大15MBまでしかXMSメモリとして使用できない。(HIMEM.SYS)
- CONFIG.SYS、AUTOEXEC.BATのステップ実行機能が未実装。
- V-Text未対応。
- 別売の「IBM DOS/V Extension」に含まれるパッチで対応。または、サードパーティーのV-Textに対応した$DISP.SYS、$FONT.SYS互換ドライバに置き換える。
- 日本語モードで動くスクリーンエディタが標準では付属しない。
- セットアップディスクとは別に付属するサンプルディスケットに「TE」という日本語モード用のエディターが付属する。あるいは、英語モード専用のEDITコマンドを使うか、ラインエディターのEDLINを使う。
DOS 4.0(J4.0/V)以前
- HMA、UMBメモリー未実装。
- IBM DOS付属のメモリ管理ドライバ(XMAEM.SYS, XMA2EMS.SYS)はIBM純正機(PS2, PS/55)以外では動作しない。(DOS/V, J-DOS)
- 付属のメモリ管理ドライバ以外ではIBMMKK(連文節変換プログラム)をインストールできない。手動でファイルをコピーして組み込むことは可能。(DOS/V, J-DOS)
- 英語配列のキーボードは未対応。(DOS/V, J-DOS)
- 複数のハードディスクに未対応。
- 2.88MB(2ED)フロッピーディスク未対応。
- オンラインヘルプ(/?)が用意されていない。
- スクリーンエディターが付属しない。
- IBMの場合は「Personal Editor」(日本では「パーソナル・エディター」)という単体の製品としてテキストエディタが販売されていた。
- 初期版(J4.05/V)はESC/Pプリンター未対応。ライトコンバインスクロール($DISP.SYS /HS=LC)未実装。(DOS/V)
- 本家MS-DOS初期版(MS-DOS 4.01a以前)にはシステムやフォーマッタに32MB超のファイルやハードディスクのデータを破壊する重大なバグが存在する。
DOS 3.4以前
DOS4.0以降でサポートされている機能の多くがオプションまたは未実装で、システムが大きく異なるため、ここでは取り上げない。
参考文献
- WindowsでのHDD容量による認識の壁 - http://oasis.halfmoon.jp/other-pc/windows/hdd-limit.html
- FAT 16 ファイル システムを使用したパーティションの最大容量 - https://support.microsoft.com/ja-jp/kb/118335
- MS-DOS 6.2 (Japanese) - DOS - マイクロソフト西暦 2000 年対応情報 - http://radioc.web.fc2.com/weblib/y2k/ms/product/user_view53200EN.htm
- MDGx MS-DOS Undocumented + Hidden Secrets - http://www.mdgx.com/secrets.htm
- IBM DOS バージョン J5.0 ユーザーズ・ガイド 、日本アイ・ビー・エム、1991年、SC18-2493-00
- readme.txt『Microsoft Product Support Services Application Note PD0255: MS-DOS 4.0X PATCH DISK』、Microsoft Corporation、1992年
- PC DOS J6.1/V ライセンス情報、日本アイ・ビー・エム、1993年
- readme.txt『PC DOS J6.1/V ご使用上の注意事項』、日本アイ・ビー・エム、1993年
- newemm.txt『Microsoft MS-DOS 6.2/V Upgrade EMM386.EXE のアップデートについて』、マイクロソフト、1995年
- dos700c.txt『PC DOS バージョン J7.00C/V 問題修正情報』、日本アイ・ビー・エム、1998年
- 他、昔のBBSの過去ログより。