1993年に
Windows NT プラットフォームを発売してから(注:日本語版の最初の出荷は1994年1月)、Microsoft はWindows
NT Workstation と Windows NT Server
という、インタラクティブなデスクトップ
オペレーティング
システムと高パフォーマンス
サーバーという2つの分野での最適化、ライセンス体系の設定を行いながら、これら2つで同じカーネル
ストラクチャ、ユーザー
インターフェイス、Application Programming
Interface (API)を提供するという方針をとってきました。この方針に沿って、Windows
NT 4.0 プラットフォームには2つのバージョンがあります。Windows
NT Workstation 4.0 とWindows NT Server 4.0 です。
Windows NT Server 4.0 と
Windows NT Workstation 4.0 の主な相違点
Windows
NT Workstation 4.0 と Windows NT Server 4.0
の違いを下の表に示します。
機能 |
Windows
NT Workstation 4.0 |
Windows
NT Server 4.0 |
システム設計の目標 |
メモリ消費を最小にしてローカル
ユーザーへのワークステーションの応答性を確保すること |
ネットワークのパフォーマンスを優先。使用可能なすべてのメモリとCPUを使用して高速なネットワーク
ファイル アクセスを提供 |
Windows
95ユーザー インターフェイス |
あり |
あり |
Win32 API |
あり |
あり |
メモリ |
16MB以上 |
16
MB以上 |
ハード
ディスク |
165MB以上(AT互換機およびPC-9800シリーズ)
195MB以上(RISCシステム) |
175MB以上(AT互換機およびPC-9800シリーズ)
210MB以上(RISCシステム) |
サポートするプロセッサの数 |
最大4個
(2個を超えるプロセッサへの対応はOEMメーカーより提供) |
最大32個
(4個を超えるプロセッサへの対応はOEMメーカーより提供) |
フォールト
トレランス |
なし |
ミラーリング、二重化、RAID
5 |
受信ダイヤルイン接続の数 |
1 |
256 |
ファイルと印刷サービス |
ピア
(10コネクションに限定) |
あり。クライアント
アクセス ライセンスが必要 |
HTTP、Gopher、FTP |
Peer
Web Services
(10コネクションに限定) |
あり。Internet
Information Server |
DNSサーバー |
なし |
あり |
DHCPサーバー |
なし |
あり |
WINSサーバー |
なし |
あり |
Indexサーバー |
なし |
あり。インターネットで無料で入手可能 |
Macintosh対応 |
なし |
あり |
NetWare向けファイルおよび印刷サービス |
なし |
あり
(Microsoft Services for NetWare が別途必要) |
NetWare向けDirectory
Services Manager |
なし |
あり
(Microsoft Services for NetWare が別途必要) |
Microsoft
BackOfficeとBackOffice Serverロゴ付きアプリケーションの作動 |
なし |
あり |
管理 |
ローカル管理と制限付きのリモート管理 |
すべてのデスクトップとサーバーを集中管理 |
パフォーマンスのチューニング |
- ユーザーのフォアグラウンド
アプリケーションの維持を最優先
- 起動時のアプリケーションへのメモリ割り当てを最小に
- ユーザーへの応答を最大限にするためスケジューラは短いタイム
スライスを使用
|
- ネットワーク
サービスは最高のシステム優先度を維持。他のサービスに優先してファイル
キャッシュを保留。
- 起動時のアプリケーションへのメモリ割り当てを最小に
- ネットワーク要求へに応答するためスケジューラは長いタイム
スライスを使用
|
Windows NTのパフォーマンス最適化の詳細
Windows NT Workstation
は、その誕生時から、それぞれのインタラクティブなデスクトップ
ユーザーのパフォーマンスを最大にするようにチューニングがされています。一方、Windows
NT Server
は複数のユーザーが同時にサーバーに接続するサーバー
オペレーティング システムとして使用したときに最大のパフォーマンスを発揮するようにチューニングされています。たとえば、PC
で作業しているユーザーが応答の早いデスクトップ、グラフィックが高速でマルチタスクの切り替えが早いデスクトップを望んだとします。しかし、ファイル共有、プリンタ、Web
ページを優先している専用サーバーではユーザー入力とグラフィックスへの応答はあまり重視されていません。
以下はワークステーションまたはサーバーとしての使用法にあわせてパフォーマンスをチューニングしたWindows
NT のコア システムの主要分野です。
- タスク
スケジューリング - ユーザーへの応答性を最大とするため、Windows
NT Workstation のタスク
スケジューラは時間をごく短いタイムスライスに分割して、複数のタスクのロードとアンロードが遅延なく実行されるようにします。ユーザーはあるタスクから
別のタスクへの切り替えが早くでき、システムの応答性は変わりません。Windows
NT Server のタスク
スケジューラは時間を長いタイムスライスに分割して、割り込みを受けることなくサーバーがネットワークの要求を処理できるようにします。この機能は、それ
ぞれのプロセッサ間のスレッドとキャッシュの同期化が不可欠な対称型マルチプロセッシング(SMP)アプリケーションで特に重要となります。
- メモリ割り当て - ワークステーション
ユーザーは通常、各種のアプリケーションをシングル
セッションでロードおよびアンロードしますので、Windows
NT Workstationアプリケーションのロード時には最小限必要なメモリが割り当てられます。これに対してサーバーでは通常はワークステーションよりもメモリ容量が大きく、サーバー
ベースのアプリケーションはロードとアンロードの頻度が低いため、Windows
NT Serverアプリケーションのロード時には要求された容量のメモリ(もしあれば)が割り当てられます。
- I/Oスループット - Windows
NT Server
の大きな特徴の1つは、主要システム資源へのアクセスが動的で等分に分配されているということです。少数のタスクやスレッドが待ち行列中のユーザー要求を
処理します。負荷は動的にCPU間で分散され、スレッドは保護された仮想空間とネットワーク
I/O に高速にアクセスします。Windows
NT Workstation ではファイル
サーバーの負荷に対応する資源が
Windows NT Server
よりも少なく、受信したネットワーク要求を一つの待ち行列で処理します。
- ファイル キャッシュ - Windows
NT Serverでは、ネットワークのパフォーマンス向上のため、キャッシュ
ファイルにメモリが最優先で割り当てられます。Windows
NT Workstationでは、応答性を最大限とするためにユーザーのフォアグラウンド
プロセスにメモリが最優先で割り当てられます。
Windows NT Workstation 4.0
と Windows NT Server 4.0 のパフォーマンス比較
ここをクリックすると、Windows NT Workstation 4.0 と Windows NT
Server 4.0
のパフォーマンスを比較したグラフがご覧になれます。
以上のパフォーマンス最適化をまとめると、Windows
NT Workstation 4.0
はユーザーへの応答を最大に、メモリ使用を最小にするようチューニングされているのに対して、Windows
NT Server 4.0 は I/O とネットワーク
スループットが高速になるようにチューニングされています。Windows
NT Workstation
ではユーザーへの応答性のためにピア
ネットワーク共有パフォーマンスが犠牲となりますが、Windows
NT Server ではファイル
サーバーのパフォーマンスのためにグラフィックの描画速度やユーザー入力速度が犠牲となります。
結論
Microsoft は Windows
ファミリ製品についてカーネル
アーキテクチャ、ユーザー
インターフェイス、API
を統一しながらもそれぞれの製品の主要ユーザーに合わせてチューニングと最適化をすることにコミットしています。パフォーマンスが強化された
Windows NT Workstation 4.0
は、より強力でインタラクティブなデスクトップ
オペレーティング
システムとなりました。同様に、Windows NT
Server 4.0 も強化され、より優れた多目的サーバーとなりました。
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