日本アイ・ビー・エム株式会社
昭和57年4月21日
日本アイ・ビー・エム株式会社(椎名武雄社長)は、21日、IBMで最も進んだ大型プロセッサー技術を採用した「IBM3083プロセッサー」の受注活動を本日より開始すると発表しました。
新しいコンピューターは、IBM3083-E型、B型およびJ型で、IBMの最上位機種であるIBM3081プロセッサーで使われている高密度論理回路パッケージングを採用しています。
IBM3083プロセッサーは、他のIBM大型コンピューターと互換性があるとともに、価格性能比が向上しており、中央処理機構は、8メガから最高32メガ・バイト、チャネルは8本から最高24本です。
3083-E型プロセッサーの命令実行速度は、IBM4341-2型と比べて最高約2.8倍速く、また3083-J型プロセッサーの命令実行速度は、同-E型と比べて最高約2倍速いものです。
3083-E型は、システム設置場所で上位機種のB型、さらにJ型へとモデル変更できます。また、3083-J型は、システム設置場所で3081-K型へとモデル変更できます。
なお、日本アイ・ビー・エムは同時に、3083プロセッサーで使用できる従来の冷却水配分装置に加えて、新しいモデルを追加しました。
プロセッサー内の熱伝導モジュールを循環し冷却した後の温度の上がった冷却用の水の熱交換に、従来のIBM3087-1型では冷却効率の良い水を使用していますが、新しい3087-2型冷却水配分装置では、この冷却用の水を空気により熱交換するという方式を採用しています。
(装置本体価格、概算) | 2年リース 月間使用料金 |
レンタル 月間使用料金 |
販売価格 (買い取り価格) |
---|---|---|---|
3083-E型(8MB、8チャネル) | 885万円 | 1,040万円 | 2億5,516万円 |
同上(16MB、16チャネル) | 1,102万円 | 1,295万円 | 3億2,116万円 |
3083-B型(8MB、8チャネル) | 1,393万円 | 1,637万円 | 4億1,464万円 |
同上(32MB、24チャネル) | 1,972万円 | 2,317万円 | 5億9,064万円 |
3083-J型(8MB、8チャネル) | 1,844万円 | 2,166万円 | 5億5,133万円 |
同上(32MB、24チャネル) | 2,423万円 | 2,847万円 | 7億2,733万円 |
3087-2型冷却水配分装置 | 53万円 | 62万円 | 1,640万円 |
IBM3083プロセッサーの客先向け初出荷は、E型が昭和58年第3四半期、B型が同年第2四半期、J型が同年第1四半期の予定です。
また、IBM3087-2型冷却水配分装置の客先向け初出荷は、昭和58年第3四半期の予定です。
3083プロセッサーと3087-2型は、米国IBMポーキプシー(ニューヨーク州)で開発され、製造は日本アイ・ビー・エム野洲工場で行われます。
〈技術補足資料〉
新しいIBM3083-E型、B型、J型プロセッサーは、大型システムにおける拡張性と価格性能比の一層の向上をもたらすものです。
本日の発表のハイライトは、次の通りです。
システム/370アーキテクチャーとシステム/370拡張アーキテクチャーによりサポートされる大きな能力をもった単一プロセッサー(ユニ・プロセッサー)で、処理能力増強の必要に応じて、設置場所で段階的に拡張することができます。
既発表の3081プロセッサーと同様に、最高133個のチップを搭載した熱伝導モジュール(TCM)と高度な設計技術を採用しており、マシン・サイクル・タイムは26ナノ秒です。
3083-E型プロセッサーの中央記憶機構は、8メガまたは16メガ・バイトで、チャネルは8本または16本です。
3083-B型プロセッサーの中央記憶機構は、8メガ、16メガ、24メガまたは32メガ・バイトで、チャネルは8本、16本または24本です。
3083-E型の命令実行速度は、オペレーティング・システムとしてMVS/SP第1版リリース3を使ったバッチ処理の場合、IBM4341-2型(ECPS/MVSを利用)と比べて約28倍速くなります。
3083-B型とJ型の命令実行速度は、E型と比べて、それぞれ約1.5倍、約2倍速くなります。
3083プロセッサーは、システム設置場所でE型からB型へ、B型からJ型へモデル変更できるとともに、J型はIBMの最上位機種である3081-K型へモデル変更可能です。 3083内で上位機種に変更するために要する時間は約5時間、3083-J型から3081-K型へのモデル変更の場合は約8時間で済みます。
3087-2型は、3083プロセッサーにオプションとして使用できる冷却水配分装置の新モデルです。
3083プロセッサー内を循環中に温度が上昇した冷却水の熱交換に、従来のIBM3087-1型では冷却効率の良い冷水を使用していますが、このIBM3087-2型では、マシン・ルームの空調設備によって供給される冷却された空気の流れによって熱交換を行うものです。
新しい3083プロセッサーは、オペレーティング・システムとしてMVS/SP第1版リリース1.1と3.0以降のリリースでサポートされています。
また、3083プロセッサーは、既発表のMVS/SP第2版とその関連のデータ管理機能(総称してMVS/拡張アーキテクチャー)によってサポートされます。MVS/拡張アーキテクチャー(MVS/XA)は、システム/370拡張アーキテクチャーを実現するもので、これによりユーザーは、20億バイト(2ギガ・バイト)の実記憶域/仮想記憶域へのアドレスが可能になり、かつ4,000台以上の周辺装置の接続が可能になります。また、これにより、プロセッサーやチャネルの利用度と使用効率を上げることができるとともに、31ビット・アドレッシングで作成した新しいプログラムと24ビット・アドレッシングのプログラムを同時に実行できるようになっています。
3083プロセッサーは、VM/SP高性能オプション・リリース2およびリリース3によってもサポートされます。
このプログラム・プロダクトは、3083プロセッサーでは標準装備の優先仮想計算機補助機構(PMA)とともに使用することにより、VMのもとでゲスト・システムとして稼働しているMVSのパフォーマンスを著しく向上させることができます。VM/SP高性能オプションのもとでは、VS1/BPE(VS1/基本プログラム拡張機能)やDOS/VSE/AF(VSE/拡張機構)もサポートします。
さらに、VM/拡張アーキテクチャー(VM/XA)移行支援プログラムも使えるため、MVS/拡張アーキテクチャーへの移行が容易に行えます。
また、3083プロセッサーは、エアライン制御プログラム(ACP/TPF)によってもサポートされます。