日本アイ・ビー・エム株式会社（稲垣早苗会長）は25日、IBM漢字システム/34を発売すると発表しました。
この漢字システム/34は、現行の英数カナ文字を扱うシステム/34の機能と性能に加えて、さらに漢字を扱えるよう機能を拡張したものです。
これにより、ユーザーは最初から漢字による業務処理を行うこともできますし、カタカナによる業務処理からスタートしこれと並行して、漢字による新しい業務処理を追加して行うこともできます。もちろんカタカナによる業務処理から、漢字への移行も何ら現行の業務に支障をきたすことなく、容易に実施することができます。
IBMは、この漢字システム/34を実現するために、重ね打ちコピーのとれる高速印刷装置、従来の表示装置と同様に使える漢字表示装置などのハードウェアを新たに開発しました。また、ワーク・ステーション制御機構とソフトウェアに漢字機能を追加し、さらに漢字分類プログラム、文字作成ユーティリティなど漢字特有のソフトウェアを開発しました。
ハードウェアとして、本日発表したものは次の通りです。
IBM漢字システム/34は、2バイト・コード体系を使い、JISの漢字をすべて含んだ漢字6,709字種と、ひらがな、カタカナ、ローマ字、数字などの非漢字文字が計481字種、合計7,190字種の漢字フォントを提供します。これはIBMが去る9月25日に発表いたしました漢字情報システムの文字セットと同じであり、コード体系も完全な互換性があります。
漢字システム/34では更にユーザー選定文字用として、4,370字分の領域を用意しています。
現行のシステム制御機能に加え、漢字入出力装置のサポート、拡張性のある文字種の扱い、漢字ディスプレイ画面の様式を容易に準備するためのシステム・ユーティリティ・プログラムなど漢字の特性に適した豊富な漢字機能が組み込まれています。
などのユーティリティ・プログラムに漢字機能が追加されています。更に漢字特有のソフトウェアとして
などが新たに提供されます。
RPGⅡ、COBOLの高水準プログラミング言語が漢字サポートをします。現行通りの機能に、漢字データを扱う機能と漢字リテラルの機能が追加されています。
写真 IBM3800-2型漢字印刷サブシステム
IBM漢字システム/34の価格は次の通りです。
| 価格（概算） | 24か月リース 月間料金 |
標準レンタル 月間料金 |
販売価格 |
|---|---|---|---|
| IBM5255漢字表示装置 （漢字鍵盤機構を含む） |
4万5千円 | 5万3千円 | 161万円 |
| IBM5225 -11型漢字印刷装置 |
11万3千円 | 13万3千円 | 404万円 |
| -12型漢字印刷装置 | 13万円 | 15万3千円 | 462万円 |
| * ワーク・ステーション制御機構拡張C |
1万9千円 | 2万1千円 | 72万6千円 |
*36か月リース
IBM漢字システム/34の開発は、藤沢研究所の基礎研究に基づいて、日米共同で行われました。製造は本体およびワークステーション制御機構は米国IBMのロチェスター工場で、IBM5255漢字表示装置はカナダIBMのトロント工場で、IBM5225漢字印刷装置は米国IBMのボカラトン工場で行われます。
客先向け初出荷は、漢字表示装置・漢字鍵盤が1980年8月、漢字印刷装置が1981年2月の予定です。
補足資料1
IBM 5255 漢字表示装置
IBM 5225 漢字印刷装置
これらの装置はシステム/34ワーク・ステーション制御機構に最高16台まで接続することができます。英数カナ文字装置と漢字装置との組み合わせ、又、漢字表示装置と漢字印刷装置との組み合わせ方は自由です。
漢字装置と接続する場合は、ワーク・ステーション制御機構拡張Cを必要とします。
漢字入出力機能を備えたワーク・ステーションです。表示機構と鍵盤機構から構成され、鍵盤機構として漢字鍵盤か英数カナ鍵盤かの選択ができます。これにより英数カナ鍵盤でも画面に漢字情報を表示させることができます。
▶漢字表示機構
漢字表示機構は、表示画面、インディケーター・コントロール・パネルから構成されます。表示画面には英数カナ文字と漢字を混在させることができます。
さらに重要な情報を見落とさないように、あるいはデータを入力しやすいように
などをプログラムで自由に指定することができます。
■表示画面
表示できる画面容量
英数カナ 960文字（80字×12行）または
漢字 480文字（40字×12行）
表示できる文字の種類
EBCDIC（従来の英数カナ文字セット） 128字種
IBM漢字システム文字セット 7,190字種
ユーザー選定文字 4,370字種
表示文字パターン
英数カナ 8×16のドット・マトリックス
漢字 18×18のドット・マトリックス
▶漢字鍵盤機構
鍵盤から、IBM漢字セットの文字、ユーザー選定文字および英数カナ文字を直接あるいは、漢字番号によって入力できます。このため鍵盤上に次のようなキーが配置されています。
■データ・キー
216個のデータ・キーがあります。1個のキーにはそれぞれ12個の漢字が配置され、12個のシフト・キーとの組み合わせにより、2,568種類の文字を入力することができます。データ・キー上の文字の配置は、使用頻度や字種により3つの区画に分けられ、さらに最も一般的な読み方であいうえお順に並べられています。
これにより、効率良くキー操作をすることができます。
また、前面部分の68個のキーには英数カナ鍵盤と同じ配列を持ち、英数カナ文字入力用のキーを兼ねています。
■機能キー
20個の機能キーがあります。システムを制御するために使用します。
ワーク・ステーションで漢字および英数カナ文字の帳票や報告書を印刷するために使用します。主な機能は、
印刷方式：両方向ワイヤー・ドット・インパクト方式
印刷速度：11型 漢字 85行/分
英数カナ300行/分
12型 漢字 140行/分
英数カナ475行/分
印字幅：漢字 66文字/行
英数カナ 132文字/行
印字間隔：漢字 5文字/インチ
英数カナ 10文字/インチ
行間隔：漢字、英数カナともに4行/インチおよび6行/インチ
補足資料2
現行のシステム制御機能に加え、漢字入出力装置をサポートする他、IBM提供の文字セットとユーザーが任意に選定して作成する文字ないし図形を合計11,560字種の範囲内でサポートします。
漢字ディスプレイ画面の様式は、現行の英数カナ文字ディスプレイ画面と同じように容易に作成するためのシステム・ユーティリティ・プログラム (SFGR) が用意されています。このプログラムを使うと、英数カナ文字フィールドの他、漢字の見出しや、漢字のフィールド、更に入力データが英数カナ文字か漢字かの選択を操作時点で行う選択フィールドなどを定義することができます。
操作員のためのメッセージは、操作員の選択に従って漢字まじりないしカタカナ文のどちらかを漢字表示装置に表示することができます。IBM提供のメッセージの他に、ユーザーは独自に日本文でメッセージを作成し登録すること、前に登録したメッセージを変更することなどもできます。
ワーク・ステーションで漢字を使用する場合も、どなたにでも簡単にしかも自由にご使用いただけるよう、さまざまなユーティリティが用意されています。
▶ソース・エントリー・ユーティリティ (SEU)
RPGⅡ、COBOL、アセンブラー、FORTRAN、WSU等のお客様が作成したソース・プログラムおよびプロシージャーをワーク・ステーションからディスクへ入力するためのユーティリティです。
▶ワーク・ステーション・ユーティリティ (WSU)
データの入力、編集・訂正・あるいは新規業務の開発を容易にするためのユーティリティです。習得も大変容易です。
▶データ・ファイル・ユーティリティ (DFU)
ワーク・ステーションから、漢字の見出しやフィールドを持つ報告書の作成、ディスク・ファイルへの入力/更新/照会を行う場合にご利用いただけるユーティリティです。
このユーティリティは特別なプログラムを作成することなく、参照したいファイルと入力項目を指定するだけでご利用になれます。とくに、問い合わせ/報告書作成の機能は、管理者の方々のために開発されたマネジメント・レポート作成のための機能です。必要なときに必要なレポートをご自身で簡単に作成できます。
▶スクリーン・デザイン・エイド (SDA)
表示フォーマットとジョブ・メニューの作成・修正をワーク・ステーションから対話方式で行うためのユーティリティです。
▶文字作成ユーティリティ
お客様の必要に応じて、対話方式により画面で確認しながら、文字をデザイン・登録できるユーティリティです。
お客様はこのユーティリティを使って、
- 得意先や氏名などの固有名詞に使われている特殊な漢字
- 特殊な産業分野で使用される漢字
- 会社のマーク
などを一度登録すれば、漢字セット同様に扱うことができます。
▶漢字分類プログラム
分類および指定された項目別に漢字データを選択・分類するためのユーティリティです。
英数カナ文字と同様、漢字に対しても処理に際して順序づけが必要となります。漢字の場合、
- 部首
- 画数
- 単一読み（各文字に一義的につけられた読み）
- 字種（ひらがな、カタカナ、英字、数字、漢字等）
といった漢字固有の順序づけが考えられます。
漢字分類プログラムでは、こうした順序づけの方法を組み合わせて、
-単一読み順
- 国語辞典
- 漢和辞典
-電話帳
- 文字別音訓索引
など、現代社会で一般的に使用されている漢字分類方式を利用することができます。さらにお客様独自の分類方式も新たに作成することもできます。
これにより、客先台帳、社内/客先住所録、社内電話帳、商品値段表などの出力帳票を"読み""部首""画数"ごとにグループ化できますから、情報検索や問合わせ等に対して迅速に対応できることになります。
▶RPGⅡ
適用業務プログラムの作成には、漢字データ処理が行え、漢字コンスタントやリテラルを使える事務計算用の高水準言語、RPGⅡがお使いいただけます。システム/34のRPGⅡでは、使いやすさ、豊富な機能、習得のしやすさの点で非常にすぐれた言語です。ワーク・ステーションでのオンライン・リアルタイム処理プログラムも、簡単な仕様書に必要事項を記入するだけで、容易に作成することができます。さらに、各種ユーティリティとあわせてご利用いただけますので、プログラム作成作業がいっそう、軽減されることになります。
▶COBOL
IBMシステム/34 COBOLは、ANS'74スタンダードに基づいて開発された高水準のCOBOLです。RPGⅡと同様、漢字データ処理が行え、漢字コンスタントやリテラルが使えます。また、ワーク・ステーションおよびリモート通信のサポートをはじめ、ソート・プログラムに対する呼び出し、3次元の配列、ダイナミック入出力オペレーション、CORRESPONDINGのサポートなどの機能を備え、システム/370 COBOL互換性を持っています。
図 IBMの漢字プリントアウト