日本アイ・ビー・エム株式会社(稲垣早苗会長)は、25日、「IBM漢字情報システム」を発売すると発表しました。
この漢字情報システムは、現行の英数カナ文字システムを拡大して、漢字機能を加えたものです。
これにより、ユーザーは現行の業務処理と並行して、漢字による新しい業務処理を追加して行うことができるようになります。また、現行のカタカナによる業務処理から漢字への移行や拡張も容易に行うことができるようになります。
IBMは、こうした英数カナ文字と漢字の共存するシステムを実現するために、新しいアーキテクチャーを確立しました。この結果、従来の英数カナ文字システムのハードウェアおよびソフトウェアに、漢字機能を追加し、有機的に共存させることができるようになりました。
この新しいシステムを実現することができたのは、IBMのLSI技術によるところが大きいと言えます。
IBM漢字情報システムは、IBMシステム/370、同303XプロセッサーとIBM4300プロセッサーの仮想記憶機能およびIBM8100情報システムによりサポートされます。
漢字の処理に必要な入力から出力までの機能を提供するハードウェアとして本日発表したものは、次の通りです。
IBM漢字情報システムは、2バイト・コード体系を使い、JISの漢字をすべて含んだ漢字6,709字種と、ひらがな、カタカナ、ローマ字数字などの非漢字文字が計481字種、合計7,190字種の漢字フォントを提供します。これにより、漢字データ処理に必要な文字はほとんど網羅されています。
漢字による新しい業務処理の開始あるいは現行の業務処理の漢字への移行に際して、その作業を容易にするため、プログラミング言語、データ・ベース/データ通信関係等の基本ソフトウェアに漢字データ処理機能を持たせ、さらにカナ漢字変換プログラム、漢字分類/組合せプログラム等、各種のソフトウェア・サポートが提供されます。
IBM漢字情報システムの開発は、藤沢研究所を中心にして行われました。漢字制御装置、漢字表示装置、漢字印刷装置、漢字鍵盤が米国キングストン研究所の研究を得て藤沢研究所で、漢字印刷サブシステムが米国・サンノゼ/サンタ・テレサ研究所、漢字穿孔機がカナダ・トロント研究所でそれぞれ行われました。
また、製造は漢字印刷装置、漢字穿孔機、漢字鍵盤が日本の藤沢工場、漢字制御装置、漢字表示装置がブラジルのスマーレ工場、漢字印刷サブシステムがスウェーデンのジャルファラ工場で行われます。
客先向け出荷は、漢字穿孔機が1980年1月、漢字印刷サブシステムが1980年2月、漢字制御装置、漢字表示装置、漢字鍵盤、および漢字印刷装置が1980年10月の予定です。
なお同日、日本アイ・ビー・エムは、現行のIBM3800-1型印刷サブシステムの値下げを発表しました。値下げ幅は、販売価格、レンタル/リース料金ともに約4.7%。販売価格は即日、レンタル/リース料金は10月1日から適用されます。
(ハードウェアは補足資料1を、ソフトウェアは補足資料2をご参照ください。)
価格(概算) | 24か月リース 月間料金 |
標準レンタル 月間料金 |
販売価格 |
---|---|---|---|
IBM3270漢字情報 表示システム |
|||
・IBM3274-52C型 漢字制御装置 |
7万8千円 | 9万1千円 | 281万円 |
・IBM3278-52型 漢字表示装置 |
4万5千円 | 5万2千円 | 165万円 |
・IBM3283-52型 漢字印刷装置 |
13万9千円 | 16万4千円 | 502万円 |
IBM3800-2型 漢字印刷サブシステム |
228万9千円 | 269万円 | 1億1千 41万円 |
IBM5924-T01型 漢字穿孔機 |
適用せず | 8万7千円 | 349万円 |
(漢字印刷サブシステムは、月間用紙処理量分に関して算定される月間使用料金が加算されます。料率は0.82円/フィート)
補足資料1
このシステムは、次の装置から構成されます。
これらは、OS/VS2(MVS)、OS/VS1およびOS/VSEによってサポートされます。
漢字表示装置、漢字印刷装置、および既発表の3278-1/2型表示装置、3287-1/2型印刷装置を最高8台まで接続でき、SNA/SDLCプロトコルにより稼働します。(3278-1/2型、3287-1/2型でAPLがサポートされます。)
なお、次のような接続方法により、IBM8100情報システムにも接続でき、分散処理システムの構築も可能です。
漢字(2バイト文字)の場合は959文字、英数カナ文字(1バイト文字)の場合は1,920文字までを1画面に表示できます。また、画面を幾つかのフィールドに区分し、それぞれに漢字、英数カナ文字などを表示できる機能もあります。
また、漢字は16×16のドット・マトリックスで表示されます。
漢字の入力用に開発された漢字鍵盤は、この漢字表示装置に接続でき、これにより複数シフト・キーの入力の方法で2,567字種の漢字の直接入力が可能です。鍵盤にない漢字の入力は漢字番号で行えます。
また、漢字鍵盤に組み込まれたカタカナ鍵盤から英数カナ文字の入力も可能です。
漢字は毎秒37文字、英数カナ文字は毎秒74文字までの速度で、解像度の高い漢字(28×28のドット・マトリックス表現)を印刷する、インク・ジェット方式を採用した印刷装置です。非衝撃式のため、音の静かなことが特徴です。
この装置は、新しい64Kビットの記憶チップの技術を採用しています。印刷速度は、毎分最高約10,000行で、英数カナ文字に加えて8,190字種の漢字の印刷が可能です。OS/VS2(MVS)またはOS/VS1によってサポートされます。IBM3800-1型から3800-2型漢字印刷サブシステムへの変更は、設置場所で行えます。
IBM029カード穿孔機と漢字鍵盤を組み合わせた漢字入力データ作成装置です。
補足資料2
SCP(システム制御プログラミング)として、次のものが漢字サポートを行います。
▶OS/VS2(MVS)リリース3.8
▶OS/VS1リリース7.0
▶VSE/AF(アドバンスト・ファンクション)リリース2が組み込まれたDOS/VSE
また、ACF/VTAMリリース2およびリリース3、ACF-VTAME、ACF/NCP/VSは、SNA/SDLCモードでIBM3270漢字情報表示システムをサポートします。IBM8100情報システムのDPPX(分散処理エグゼクティブ)もIBM3270漢字情報表示システムをサポートします。
ACF/VTAMリリース2および3を通じて、リモート接続に対するIBM3270漢字情報表示システムをサポートします。
ACF/VTAMリリース2および3、またはIBM4331通信アダプターのためのACF/VTAMEを通じて、IBM3270漢字情報表示システムのリモート接続をサポートします。
PL/I最適化コンパイラーおよびライブラリーのOSリリース4.0とDOSリリース6.0は、新しいPL/I漢字サポートを提供します。
漢字ユーティリティーのCOBOL漢字前処理の機能を使うことにより、COBOLでも漢字が使えます。
4つの分類方式(漢字基本型、国語辞典方式、文字別音訓索引方式、電話帳方式)を含め、融通性のある分類を行うことができます。従来のOS/VSまたはDOS/VS分類/組合せプログラムに対する前処理と後処理機能として働きます。
OS/VSでサポートされ、カタカナの名前と住所のファイルを漢字ファイルに変換する機能を提供します。
漢字を含むデータ・セットの印刷、JIS漢字コードとIBM漢字コードとの変換、およびCOBOL漢字前処理、漢字リテラルを含むCICS/VS基本マッピング・サポート(BMS)の原始ステートメントの前処理などの基本機能を提供します。
CICS/VSのもとで、IBM3270漢字情報表示システムのユーザーに対し、漢字および英数カナのデータ入力、検査、および修正のサポートをします。