IBM 8100情報システムは、新しい設計、テクノロジー、プログラミングを採用した多様性に富んだ経済的な分散処理システムである。
このシステムは64Kおよび18Kビットの新しい高密度メモリー・チップを使用している。
高速の磁気ディスク装置を内蔵した強力で小型の新プロセッサー群、新磁気テープ装置、新表示装置、新印刷装置などの新ハードウェアに多様なライセンス・プログラムという新ソフトウェアを組み合わせることによって、8100情報システムはデータ処理の専門的知識なしにでも導入、稼働できるよう工夫されている。
大企業で、この新システムをコーオペラティブ・ネットワーク・プロセッシングの一部として使用し、IBM システム/370 プロセッサーに連結することも他の8100システムに連結することもできる。
これによって、ローカル・ユーザーが整然、確実かつ費用効果の高い枠組みのなかでセンター、ローカル両方のコンピューター・パワーを利用できることになる。
また、大企業の各事業所や支店が8100を単体の独立したコンピューター・システムとして利用し、それぞれの仕事にスピード・アップを図ることもできる。この場合でも後日必要が生じた時に、システムを拡張したり、センター・コンピューターと結合してネットワークの一部とすることが容易である。
ユーザーへの便宜を考えて、IBM 8100情報システムの構成要素は相互に自由に結合できるだけでなく、本情報システム以外の色々な他システムや端末装置とも組み合わせられるようになっている。
新システムは次のようなものから構成される。
IBM8130は新しいメモリー・チップのテクノロジーを特徴としている。
8130/8140はそれぞれ1500と800ナノ秒のサイクル・タイム、256〜512Kバイトの主記憶装置を持っている。両プロセッサーとも取り外し可能な、1Mバイトの容量を持つIBMディスケットを補助記憶機構として使用するが、256Kバイトの容量のディスケットを追加使用することもできる。主なデータ記憶機構は最高64Mバイトの内蔵された高速の磁気ディスクの機構によって提供され、システムのマルチ・プログラミング機能をサポートする。また、プロセッサーはシステム/370および多種類の端末装置を結合する通信機能を備えている。
IBM 8101は64Mバイトまでの高速の磁気ディスク機構と情報表示装置、印刷装置、磁気テープ装置の増設のために使用できる。この装置は8140プロセッサーに最高4台まで、8130プロセッサーには2台まで接続できる。多種類のIBMおよび他社の端末装置やデータ処理システムを、広範囲に使える通信アダプターを介して取り付けることもできる。
8100にはIBM 3277/3278表示装置が使えるだけでなく、これらと同様な機能を持つ新表示装置8775が利用できる。
この装置は画面の反射がなく、見やすい画面位置、しっかりした映像を表示するなど操作員が使い易い設計になっている。最高3,440文字が表示可能で、画面を8分割して使う機能を持っている。表示文字および表示フィールドは、輝度、点滅、および明るい背景に暗い文字を表示するという3つの方法で強調される。
IBM 8809は、テープの動きを電子的に制御することにより価格性能比を向上させている。8809はプログラムやデータを1,600BPIのテープで使用することで、他の高性能なIBM磁気テープ装置と互換性を持っている。8809磁気テープ装置は20,000〜160,000文字/秒のデータ転送速度を持っている。
2つのライセンス制御プログラムのうちどちらを選択するかにもよるが、システム、端末装置、周辺装置に様々な選択、組み合わせが可能なので、8100によるネットワークは個々の場所、部門、事務所ごとの様々な要求に応えることができる。
例えば、8100とIBM 3630作業データ通信システムの間でデータ・リンクが構築できるので、3630により製造現場でのデータを収集し、これを社内のセンター・システムおよび他の分散システムに送付することができる。また8100情報システムには既に使用されているIBM情報表示装置や通信端末装置を加えることもでき、この場合エレクトロニック・メッセージや遠隔診断機能など高度な新機能をこれらの装置に持たせられる。
8100の各要素および他システム間のデータ転送速度はシステム構成、伝送方式、その他によって変わるが、最高48,000ビット/秒まで可能である。
8100システムには2つの新しい印刷装置が含まれる。3289モデル3印刷装置は毎分400行、また、デスク・トップ型の3287印刷装置は毎秒80と120文字の2つのモデルがある。
ローカル・ループに3287印刷装置を接続することで、8775情報表示装置のプリンターとして、画面に表示された情報のハード・コピーを端末操作員の意志で取ることができる。
ネットワーク・データは2通りの方法で機密保護される。ひとつはSNAネットワークへのアクセスを制御する一組のハードウェア、ソフトウェアである暗号サブシステムであり、もうひとつはコンピューターと端末装置間のほとんどの種類の伝送を暗号化および解読するIBM3845/46データ暗号装置により行われる。
これらにより、企業は機密漏えいを心配せずに、機密情報を含んだデータ資源を分散することができる。
新しいIBM8100情報システムはIBMのめざす体系だったネットワークの拡張を実現するSNA思想に基づいているが、ユーザーが体系的に、しかも費用効果の高い方法で自社のネットワークを拡張できるように、2進データ同期、調歩式等の非SNA装置も、通信アダプターを使うことによって8100システムに接続可能になるようにしてある。
IBMで製造される8100で使用されている新しいメモリー・チップは最高64Kビットの情報を貯えることができる。この新しいチップは現在までにIBMで製造された製品のなかで、最も密度の高いもので去る。
64Kビットというと、8文字で1,000語に相当する多量の情報を単一チップに組み込める高密度テクノロジーのおかげで低価格が実現できた。18Kビットの同様な高性能チップも同時に発表され、8775表示装置に使われている。両チップとも新しいIBMの製造プロセスにより作られている。このプロセスは、信頼性の高い極小の金属ゲート(スイッチ)を形成するためのものであり、金属ゲートとは電子情報が存在するかしないかを記録するものである。
新しいモノリシック・ランダム・アクセス・メモリー・アレイ・チップはダイナミック・ワンデバイス・セル・アレイとIBMが新たに開発したFET(電界効果トランジスター)プロセスを利用することにより高密度化に成功したものである。
このFETプロセスは、ゲートの信頼性を高めるためにシリコン・ニトライドおよび表面上での電子の漏れを防ぐのに有効なコンダクティブ・フィールド・シールドを使ったnチャネル金属ゲートFETテクノロジーを利用している。
64Kビット・チップは米国バーモンド州バーリントン近郊のIBMゼネラル・テクノロジー部門で開発され、18Kビット・チップは西独ボーブリンゲンのドイツIBMの研究所で開発された。両チップともドイツIBMジンデルフィンゲン工場と米国IBMバーリントン工場で製造されている。
IBM8100情報システムの購入方法は買い取り、24か月契約のリースまたはレンタルがある。トータル・システムの価格はその構成、通信スピード、およびその他の要素により変わる。IBM8100情報システムの価格(概算)は次の通り。
24か月リース 月間料金 |
月間レンタル料金 | 買い取り価格 | |
---|---|---|---|
IBM 8130プロセッサー 512Kバイト 1Mバイトのディスケット 64Mバイトの磁気ディスク |
18万7,000円 | 22万円 | 704万円 |
IBM 8140プロセッサー 512Kバイト 1Mバイトのディスケット 64Mバイトの磁気ディスク |
36万5,000円 | 42万9,000円 | 1,104万円 |
IBM 8775表示装置 | 2万1,000円 | 2万4,000円 | 91万円 |
IBM 8809磁気テープ装置 | 7万円 | 8万2,000円 | 245万円 |
IBM 8101補助記憶・入出力装置 | 10万7,000円 | 12万6,000円 | 386万円 |
IBM 8100情報システムの客先向け初出荷は1979年第4四半期を予定している。
IBM 8130 プロセッサーは米国IBMラーレイ研究所で開発され、IBM 8140プロセッサー、IBM 8101は米国IBMキングストン研究所で開発された。また、IBM 8809は米国IBMツーソン研究所、IBM 8775は英国IBMハーズレー研究所でそれぞれ開発された。
IBM 8130, 8140, 8101, 8809の製造は、日本アイ・ビー・エム藤沢工場でも行われる。IBM 8775はブラジルIBMのスマーレ工場の予定である。
写真 IBM8100情報システム
革新的なIBM8100情報システムで用いられるライセンス・プログラムは、使用が容易な上、高水準の機能と価格性能比上の利点を備えている。
分散処理エグゼクティブ(DPPX)と呼ばれるプログラムは、IBM8100情報システムの主要な2つのライセンス・プログラムのうちの一つでオペレーティング・システム的機能を持っている。このDPPXによって、複数のユーザーがあたかもそれぞれ専有のコンピューターを持っているかのようにデータの処理が行える。
また、DPPXは、8100システムの持つモジュラリティという利点と通信上の柔軟性といった利点を十分に活用できるようにするプログラムで、ユーザーはこれによって独立型であろうとサテライト型であろうとどのような分散処理システムでも形成することができる。
もうひとつの主要なライセンス・プログラムは、分散制御エグゼクティブ(DPCX)と呼ばれ、最高31までの業務を同時に管理できる。既発表のIBM3790通信システムで使用していた適用業務プログラムはDPCXを備えたIBM8100で修正することなく利用できる。
IBMシステム/370をホストとして管理されるネットワークの確立や設置済みのIBM3790システムを経済的にグレード・アップしたいという要求に対して、DPCXはより速やかな処理とより拡大された磁気ディスク容量の利用を可能にするものである。
これら2つのライセンス・プログラムの主な機能と内容は次の通りである。
DPPXは、IBM8130, 8140プロセッサー用の強力なオペレーティング・システムで、COBOLなどの高水準言語での適用業務プログラムの開発をはじめ、ネットワーク・プロセッシングや独立型でのデータ処理を可能にするシステムの基本的機能を提供するプログラムである。
同プログラムは、特定の分散処理機能を果たす他のいくつかのライセンス・プログラムとともに働く。それらのうち主なものは次の通りである。
システム内のデータ・ファイルを自動的に更新、管理するプログラム。多くのユーザーは同時に情報を出し入れすることができる。この"自己管理"機能によって、ユーザーは新しい適用業務の開発などに専ら力を注げるようになるので、ユーザーの生産性の向上に役立つ。また、この新プログラムは既発表のCICS/VS(仮想記憶顧客情報管理システム)などのDV/DC(データ・ベース/データ通信)システム用のプログラムと類似しており、随所に分散化されたデータ・ベースをセンターでの一連の手順で形成できるようにしている。従って、監査、機密保護や諸管理機能はより簡単になっている。
ホスト・コマンド・プログラムはセンターの要員がネットワーク内のどの8100システムに対しても、その稼働状況をチェックしたり、業務の処理を行わせたり、プログラムを準備させたりできるようにするプログラムである。これによって遠隔地の8100システムに対し、センターからの高度のサポートが行える。
3270データ・ストリーム互換プログラムというプログラムは、8100システムに接続されているほとんどのIBM3270情報表示システムや今回発表の8775表示装置から、センターのIBMシステム/370で実行しているプログラムや適用業務にアクセスできるようにするパス・スルーの機能を備えている。これを使うと、現在使用中のIBM3270情報表示システムはその制御装置を除いてそのまま継続できるので、IBM8100システムを、混在した通信方式を持つ既存のネットワークにも速やかに統合できる。
適用業務プログラムを端末利用者が開発する際に、作業を容易にするプログラム。
これを使うと、利用者の指示は自動的にCOBOLに変換される。利用者は特殊なデータ処理の技術を持たなくとも、強力で広く利用されているCOBOLのプログラムを作成できる。他のライセンス・プログラムとしては、DPPX/COBOL、同/FORTRAN、同/ASSMがあり、これらはそれぞれの言語やアセンブラーで書かれた適用業務プログラムのコンパイルを行えるようにしている。
簡単な命令を使って3270と8775表示装置画面のフォーマットを容易に設定できる機能や誤データが打鍵されたときの点滅表示、次に入力すべき場所をブランクで利用者をガイドする機能などを持つプログラム。一度、定義された各種のフォーマットは利用者によってシステムから取り出せたり、プログラムで自動的に利用できる。画面のデザインは画面の前で対話形式で、また、センターあるいはネットワーク中のどの8100システムからでも行える。
DPPXとともに働くその他のプログラムには、8100システムからセンターのS/370へジョブを入力し、結果を受けとれるようにするRJE機能や同システムからセンターのアクセス管理、機密保護機能下でセンターのプログラムやデータ・ベースを変更、利用、更新したりできるようにするものがある。
DPPXは、また、特定のバッチ処理―たとえば給与計算の実行―を操作員の介入なしに所要のオペレーションをプログラムで自動的に遂行できる能力をもっており、要員のワーク・ロードの平衡をとるのに役立つものである。
システム・ネットワーク体系(SNA)に基づくホスト・コンピューター主導型のデータネットワークを必要とする企業の場合、このDPCXというライセンス・プログラムを使うと処理速度を改善し、最大320メガ・バイトの磁気ディスク上のデータへのアクセスと新しい8809磁気テープ装置を利用できる。
これによって、ユーザーは生産性を向上できるのでより多くの適用業務プログラムの開発、使用ができるようになる。
その他の機能としては、この8100システムをセンターから稼働できるリモート・バッチ・ターミナルとして使えることで、バッチ印刷やメッセージ交換などに使える。
DPCXは、センターのシステム/370からテスト、プログラミングが行えるなど、IBM3790通信システムの備えていた機能も組み込んでいる。 IBM3790システム用の書かれたプログラムはIBM8100情報システムで実行できる。
DPCXの下で働く適用業務プログラムはセンター側で開発される。このため8100システムが設置されているそれぞれの場所にデータ処理要員を配置する必要が減るので、プログラマーの生産性の向上がはかれる。
IBM8100情報システムはセンターのIBMシステム/370に結合できる。その場合のセンターのシステム制御プログラムとしてはOS/VS1(仮想記憶オペレーティング・システム/1)、OS/VS2 MVS(多重仮想記憶システム)、DOS/VS(仮想記憶ディスク・オペレーティング・システム)のいずれでもよい。
DPPXは月間3万2,700円のライセンス料金で利用できる。複数の8100システムを使用して分散処理ネットワークを構成する客先が、ネットワークの開発・保守をセンターで集中して管理すると決め、DPPXおよびその関連プログラムを使用する場合にはIBMサービス・オプションが適用され、かなりの経費削減が可能になる。
DPCXは月間4万6,900円のライセンス料金で利用できる。
DPPX、DPCXはともに1979年第4四半期から使用可能の予定。これら両プログラミングの開発は米国IBMキングストン研究所の統括のもとに行われた。